京アニ、容疑者の近況

以下、朝日新聞の記事:

 京都アニメーション第1スタジオで35人が死亡した放火殺人事件は18日で発生から1カ月。殺人や現住建造物等放火などの容疑で逮捕状が出ている青葉真司容疑者(41)は全身をやけどし、皮膚移植の手術を繰り返し、呼びかけに反応は示すものの、なお重篤な状態が続く。なぜ京アニを狙い、破壊的な行動に至ったのか。謎は残ったままだ。

 青葉容疑者はなぜ、京アニを襲ったのか。
 「(小説を)パクりやがって」。警察官に取り押さえられた後、まだ意識があった青葉容疑者は周囲にそう叫んだという。
 京アニは2009年から京都アニメーション大賞を設け、アニメ化や文庫化を前提に小説やシナリオを公募してきた。当初、京アニ側は青葉容疑者からの応募を「確認されていない」としていたが、さいたま市見沼区の住所が報道され再確認したところ、同姓同名の人物からの応募があった。
 京都府警は青葉容疑者自身が書いた小説を応募したとみて、京アニ側から作品を入手。捜査関係者によると、小説はストーリーを伴い、「ちゃんとした小説になっている」という。
 一方、京アニの代理人弁護士は形式面で一次審査を通過しなかったとし、「これまで制作された作品との間に類似の点はないと確信している」としている。
 青葉容疑者の京アニへの関心の高さは府警の家宅捜索でも裏付けられた。アニメ「響け!ユーフォニアム」の色紙のほか、関連書籍、映画のパンフレットなど京アニの関連商品を複数、押収した。事件3日前に京都入りした後の足取りの捜査でも、青葉容疑者が「響け!」の舞台となり、ファンの間で「聖地」とされる京都府宇治市や京都市伏見区のゆかりの地を歩いてもいた。
 ただ、京アニへの関心がどこで恨みに切り替わったのかは謎に包まれている。
 府警が着目するのがネット掲示板への書き込みだ。
 昨年9~11月、「小説をパクられた」「最初から原稿を叩(たた)き落とし裏切る気だった」「絶対に許さん」「爆発物もって京アニ突っ込む」「無差別テロ」などと京アニを名指しし、一方的に恨みを募らせた書き込みが断続的に続いた。府警は青葉容疑者の自宅から押収したタブレットやスマホなどの解析を進めるが、誰が書き込んだのかまだ特定はされていない。
 ただ、捜査関係者の一人は「書き込みには青葉容疑者しか知らないことが含まれている」と関心を寄せる。書き込みをたどると、応募した小説が審査で落とされ、京アニへの恨みを増幅させていった姿が浮かぶ。だが、なぜ「小説を盗まれた」とまで思うに至ったのか。府警幹部は言う。「動機の核心は本人に話を聴かないとわからない」(川村貴大、本多由佳)

■非常勤で県庁にも
 35人の犠牲者数は、戦後の殺人事件で最悪とみられる。青葉容疑者はなぜ破壊的な行動に至ったのか。
 近隣住民や親族らによると、両親は幼い頃に離婚。父親のもとで兄妹とともに現在のさいたま市内で育った。小中学校の同級生らは「影が薄かった」と口をそろえる。1994年、埼玉県内の定時制高校に進学。2年の時から非常勤で県庁で働いた。文書課で集配業務を担った。
 定時制の同級生の男性(41)は「『県庁の人』という優秀なイメージがあった」という。席は教室の一番前。バドミントンなどのスポーツにも打ち込んだ。
 だが97年ごろ、県は人件費の抑制などで集配業務の外部委託を決定。青葉容疑者との契約は高校卒業とともに更新されなかった。
 当時は就職氷河期。コンビニや新聞販売所でアルバイトを続けた。
 99年12月、タクシー運転手だった父親が亡くなった。近所の男性(77)は「残された子たちは家賃も払えず、アパートを追い出された。あの子らがどうしたのか気になってたんですが……」。
 リーマン・ショックが起きた2008年の暮れ。30歳で派遣会社員だった青葉容疑者も雇い止めに遭った。ハローワークのあっせんで茨城県常総市の雇用促進住宅に入居。管理人らと交わした資料には「派遣契約の停止に伴い、住居を喪失した」とある。郵便配達の仕事にも就いたが、まもなく生活保護を受け始めた。
 12年6月、青葉容疑者は自室を「破壊」した。当時の管理人の男性が部屋に入ると、壁に穴が二つ。ノートパソコンの画面が粉々に割れ床に散らばっていた。「腐った臭いが充満していて、異様な光景。何かで自暴自棄になったんだと思った」と男性は振り返る。
 16年夏から暮らしていたさいたま市見沼区のアパートでは、大音量のゲーム音を複数の住民が聞いた。隣の部屋に住む男性(27)は事件の4日前、青葉容疑者に玄関ドアをたたかれ、胸ぐらをつかまれてすごまれた。「うるせえ、殺すぞ。こっちは余裕ねえんだ。失うものねえんだ」
 家宅捜索時、部屋は足の踏み場がないほど散乱し、大型スピーカーは破壊されていた。直近の交友関係について、京都府警幹部は「極めて少なかったと感じている」と話す。
 埼玉県庁で上司だった女性は言う。「どうしても彼と事件が結びつかない。なぜこんなことになったのか、どうして止められなかったのか、知りたい」(長谷川健)

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