トヨタだけの特徴ではないと思うのだけど……

「会社ってゴミや、死んだ方がましや」
 トヨタ自動車の上司からのパワハラが原因で適応障害となり、2017年に自殺したとして、今年9月に豊田労働基準監督署から労災認定を受けた男性社員(当時28)。自ら命を絶つ3カ月前、両親にそうメールで訴えていた。
 遺族側の代理人弁護士などによると、男性は15年4月に入社。1年間の研修を終えて、車両の設計などを担当する部署に配属された。多忙な部署で、新人にもかかわらず1人で会議に出席することもあった。
 男性にパワハラをしたと認定されたのは、その部署の上司だ。トヨタの調査や男性の手帳などから明らかになったのは、こんなパワハラ行為だったという。
 ・日常的に「バカ、アホ」と言う
 ・「なめてんのか、やる気ないの」「こんな説明ができないなら死んだ方がいい」などと叱責(しっせき)する
 ・(地方大学を卒業後、東京大大学院を修了した男性について)「学歴ロンダリングだからこんなこともわからないんや」と言う
 ・個室に呼び出して「俺の発言を録音していないだろうな。携帯電話を出せ」などと詰め寄る
 度重なるパワハラを受けた男性は、16年7月から3カ月間休職。豊田労基署の認定によると、男性はこの頃には適応障害を発症していた。実家に帰省したときは、寝ている間に叫んだこともあったという。
 同年10月に職場復帰。所属は別のグループに移ったものの、同じフロアにはあの上司の姿があった。
 男性は仕事ではプレッシャーがかかると手が震えたり、独り言を言ったりするようになり、単純な作業ミスを繰り返した。新しい上司はそのつど、「深呼吸してー。落ち着いて」と声をかけた。
 しかし17年7月ごろから、男性の状況はさらに深刻に。同僚には「死にたい、この先楽しみがない」「(パワハラ行為を認定された上司の)目線が気になるので、席を替わりたい」などとこぼすようになった。8月には同期入社の別の友人に「自殺するかもしれない、ロープを買った」と伝えていた。
 同月に休暇を終え、実家からトヨタ本社がある愛知県豊田市に帰った時には、「絶望都市に帰ってきたわ」と両親にメール。それでも働き続けたが、亡くなった10月には周囲に「疲れた」「忙しい」と頻繁に言うようになり、友人に「発狂しそうだ」とメールしていた。
 男性の両親は、代理人弁護士を通じてコメントを公表。男性を「勉強、スポーツに打ち込み、多くの友人に恵まれて過ごしてきた息子は、懸命に努力して、たくさんの希望をもってトヨタに入社した」と振り返り、トヨタについて「パワハラを放置するような対応が更に息子を苦しめたのではないか」と指摘した。
 そして、「私たち夫婦が一生懸命育てた子供がこのようなことになり、いまだに受け入れられず、息子のことが忘れられず、日に日に会いたい気持ちがこみ上げてくる毎日」と悲痛な心情を吐露。「私たちと同じ苦しみを負う方やパワハラ被害が生じないよう、職場環境の改善に努めていただくことを切に希望します」と訴えた。(遠藤隆史記者)

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