もっと長くすれば、広州の南方都市報にありそうな記事です。

ちょっと驚いた。こういう記事を朝日が書くようになった。
もう何を書いてもいいと思う。読者に読んでもらいたいことを調べ、書く。ネットだからできる。

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返信は11通目に来た 引いた一線、17歳の母との再会

岩手県警の少年補導職員、木井さくやさん(52)が少女と初めて会ったのは、盛岡東署の一室だった。万引きで補導されて半年。最近の生活ぶりを聞くと、「授業についていけない」「頼れる人がいない」と、14歳の少女は、遠慮なく悩みを打ち明けてきた。
 まっすぐな子だ。それが第一印象だった。
 警察を毛嫌いする子が多いなか、少女からはたびたび電話がかかってきた。平日の昼間しか電話に出られないと伝えても、朝出勤すると、留守電に「かけ直すね」とメッセージが残されていた。
 先生のこと、友だちのこと。少女と交わす多くは、とりとめもない話だった。ただ、ときどき母親のことが話題になった。叱られた。話を聞いてくれない。少女はけんかのあげく、家を飛び出し、深夜徘徊(はいかい)を繰り返していた。
 中学を卒業した少女は県外に出て、アルバイトをしながら各地を転々としていた。木井さんは手紙を送り、「困ったことがあったらいつでも連絡してね」と伝え続けた。お母さんとの関係を取り戻すことができれば、少女は変わっていける――。10年あまりの経験からそう感じていた。
 〈どうすればいいかな〉
 少女から初めて返信が届いたのは、11通目を書き送った数カ月後、2018年6月のことだった。丸っこい平仮名で、知らない土地での生活ぶりがつづられていた。お母さんとうまくいっていない、とも書かれていた。
 〈ずっとうまくいかない、何もかも〉〈やだー人生たのしくないよー〉
 不安になった。でも、少女との距離が近づいた気がして、ほっとする気持ちもあった。
 4カ月後。久しぶりに帰省した、と電話で連絡があった。「駅まで来てくれない?」。迎えに来てくれる人がいない、お金もない、今日だけ、お願い。少女はそう訴えてきた。
 「本当のお母さんみたい」。以前、少女にそう言われたことを思い出した。補導職員として、相手とは一線を引かなくてはいけない。「警察はタクシー会社じゃないんだから」と伝えて電話を切ったが、家に帰ってからも彼女のことが頭から離れなかった。
 その年の暮れ。「近くにいるから」と連絡があってすぐ、少女は警察署に現れた。おなかが大きく膨らみ、手にはもらってきたばかりという母子手帳が握られていた。
 19年9月、少女に招かれてアパートを訪ねると、リビングの日がよくあたる場所で、毛布にくるまれた赤ちゃんがぐっすりと眠っていた。
 「遊んでばかり、迷惑かけてばかり。そんなママだったら、この子はやだろうな。うち、この子が恥ずかしくないママになりたい」
 そんなことを言いながら、手際よくミルクを準備する少女の姿に、木井さんは目を細めた。
 うれしい知らせが、もう一つあった。
 妊娠を機に少女は実家に戻り、出産まで母親と一緒の時間を過ごしていた。定期健診の行き帰りには送り迎えもしてもらっていたという。母親から「何かあったらなんでもいいなさい」と言われた、と教えてくれた。
 人なつっこく慕ってくれる少女はいま、17歳。これからも大変なことはあるだろう。木井さんは、伴走を続けていく。(太田原奈都乃)

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