私は私でありたい ホームレス女性「小山さん」のノート、有志が出版目指す
私は私でありたい ホームレス女性「小山さん」のノート、有志が出版目指す 2022年4月3日 05時00分 「小山さん」が書き残したノートなどを手にするメンバー=都内で 九年前の年末、東京都内のとある公園でホームレスの女性が亡くなった。ブルーシートのテントに残されていたのは三十冊以上のノート。極貧下、理不尽な暴力にさらされながらも、自分らしく生きた日々が記録されていた。有志の女性たちが文章を書き起こし、出版を目指している。 (中村真暁) 亡くなった女性の本名は分からない。公園では「小山さん」と呼ばれていた。アフロヘアのかつらにハイヒール姿。生活保護も医療も拒んでいた。 二〇一三年秋、体調が悪化すると、近くで野宿する女性たちが身の回りを世話した。息を引き取ったのは十二月二十七日早朝。六十五歳だった。 ノートは一九九一年ごろからつづられている。それによると、小山さんはもともと関西地方にいた。〇〇年ごろに都内で野宿を始めると、役所にテントを撤去するように言われたり、同じホームレスの男性から暴力をふるわれたりした。遺品を整理した野宿者仲間のいちむらみさこさんは「一人の野宿女性の暮らしや思いの貴重な記録」と感じ、数人でノートの内容を一部書き起こした。一周忌に開いた追悼展で紹介すると、共感の輪が広がった。 有志約十人は一五年三月から月一度のペースで集まり、ノートの文字を書き起こす作業を続けた。 メンバーの一人は「私、今日フランスに行ってくるわ」という一節が印象的だった。小山さんは有名カフェチェーンを「フランス」と呼んでいた。お気に入りの席でコーヒーを飲みながら、ノートに向かう時間を大切にしていたようだ。 路上で拾ったスカーフに心をときめかせたことや、美しい夕日に心を奪われたこと